二千八年関東下向記[(横浜松坂屋最終日)



 

左・右:2008年10月26日、この年四度目の東下りとなった。メインの用事は南海摩登博覧会で開催する無声映画上映会で僕が活動弁士をすることになったので、楽士の柳下美恵女史をお訪ねし、リハーサルをすることである。そして丁度26日で伝統ある名門、横浜松坂屋(旧野沢屋)が廃業するので、まずは横浜で下車した。東名高速江田バス停で降り、物凄く料金が高い横浜市営地下鉄に乗り、長者町で下車したら、これがあった。旧横浜中央電話局長者町分局で、今もNTTの施設として使われている。綺麗に整備されているので、少なくとも当分は壊されることはないだろう。上浪朗の設計で大正14年に建てられている。如何にも逓信建築然としたスタイルで、美しい。



 

左・右:長者町電話局の裏側。物凄く抽象化されているが、一応ゴシックである。



 

左:正面玄関はほぼトマソン化している。
右:郵政は民営化後も「郵便局」と言う明治以来の呼称を残したが、電電公社が消えて「電話局」は死語になっている。この交叉点はちゃんと電話局と言う名前を残していて、とてもいい。



 

左:偉大なる神戸物産の業務スーパーがこんなところにも。それにしてもこのビル、元は映画館だったのではないかと思わせる。
右:そして伊勢佐木町。このビルは戦後だろうが、初期モダニズムの特徴がよく出ている。



 

左:同じビル。
右:神戸の元町と横浜の伊勢佐木町、その成り立ちから全盛期まで非常によく似た街なのだが、「奥に行くほど寂れている」という点も全く同じであった。



 

左:広大な土地が地上げされてしまったため、裏通りの風俗街が見えてしまっている。いかがわしい街がすぐ隣というのは神戸の元町とは違うところ。
右:何だか昭和な雰囲気のまま改装されていないスーパーがあった。懐かしい。



 

左:どんなマッサージやねんσ(^◇^;)。
右:素敵な漢方薬局。



 

左・右:どうということはない小さなビルなのだが、軒の看板文字の冒頭一字が抜けてしまっている。榮屋だろうか?



 

左:バラック建築も健在であった。ボロボロになっている英文看板は恐らく進駐軍時代のもの。
右:伊勢崎町はアーケードがないのだが、代わりにこういうモニュメントがあった。



 

左:恐ろしげな名前の警備会社。
右:どんどん奥へ。もう商店街という様相ではなくなってきた。



 

左:もう普通の生活道路といった様相。
右:香港を思わせる巨大な公団住宅があった。60年代には高級で庶民は住めなかったという市街地団地だろう。



 

左:伊勢崎町の外れまで歩いたので、今度は一本裏道を中心部へ向かう。なかなかに素敵な雑居ビル。昭和臭が濃い上、テナントもうらびれた風俗店などである。
右:これも伊勢崎町の表通りではない。錆錆で意味がなくなったアーケードがあった。



 

左:同じアーケード。きっとかつてはネオンサインが輝いていたのだろう。
右:何ともでこぼこな道で、この貧相な二階建てはポリ小屋であった。



 

左:これも戦後だとは思うが、相当年季の入った雑居ビル。二階に「刺青保存會」が入っているのもいい雰囲気。
右:そして伊勢佐木町に戻る。上でも紹介したモダニズム風ビルである。



 

左:この辺りまで来ると、伊勢佐木町も「都会の繁華街」の様相を呈する。
右:戦後モダニズムの商店建築。



 

左:可愛いコーギーが繋がれていた。
右:旧横浜松坂屋百貨店別館。今ではエクセル伊勢佐木町という名前の場外馬券売場になっている。要するに賭場なのだが、この建物を大切にするとは中央競馬会は意外にセンスがいい。1931年に大林組の設計で建てられた元の松屋横浜店である。77年に松屋が創業の地横浜から撤退、その後にノザワ松坂屋の別館となり、同時に名門「野澤屋」の屋号が完全に消えて、横浜松坂屋と改称された。



 

左・右:エクセル伊勢佐木町細部。非常に端正な建物である。



 

左:同上。
右:内部もわりとよく保存されていて、百貨店時代の雰囲気が残っている。



 

左:列柱が支える空間。なかなかに豪華である。
右:松坂屋本館向かいにある不二家。今でも普通にケーキを売ってててレストランになっている。モダニズムスタイルだが、戦前物件である。設計者はなんとアントニン・レーモンド。1938年の竣工である。



 

左:内部は比較的よく残っている。大理石の柱が見える。右側の壁はあとから仕切ったもので、店舗部分である。こちらの通路はエレベータと階段の入口で、事務所部分となっている。
右:自動式に改造されて入るが、三枚扉のエレベータは古風である。二枚のみが動き、左端の一枚は実は戸袋というのがこの時代のエレベータの特徴。



 

左:かつては二階食堂への入口だった階段だが、このように塞がれてしまっている。
右:エレベータ前から入口附近を見る。



 

左:極めてシンプルではあるが、このビルも明らかに戦前のもの。精力剤薬局が入ってるのが正面で、伊勢佐木町通りに面している。
右:右側の路地を抜けたところから振り返る。古い建物が多い。



 

左:同じビルの側面。手入れはあまりよくなく、ネットがかけられている。
右:そして横浜松坂屋本館。旧野澤屋百貨店である。



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