私利私欲のために文化を破壊する朝日新聞社篇



 

左・右:撮影は2007年4月4日。これを作成している2009年5月5日現在で、既に永遠に失われてしまった光景となっている。橋は土佐堀川に架かる錦橋(可動堰)、陶壁画が美しい建物は新朝日ビルのホール部分(フェスティバルホール)、アルミパネルの部分が新朝日ビルのオフィス棟。新朝日ビルは1958年、竹中工務店の設計で建てられた。当時の日本で最も高層のオフィスビルとして華々しくオープンした名建築で、docomomojapanの「関西のモダニズム建築20選」にも選定されている。築五十年を過ぎ、当然に登録有形文化財となろうと思われていたところ、所有者の朝日新聞はその文化財的、歴史的価値を一切省みることなく、営利追求のため破壊して超高層ビルにすることを発表した。何が日本のクオリティペーパーか。企業の社会的責任も文化的貢献も、一切何も顧みられてはいない。こんなことでは右翼結社の機関紙のほうがまだましである。フェスティバルホールは日本のクラシック音楽の聖地であり、ステージに立ったのはベーム、カラヤン、オーマンディ、セル、そして朝比奈隆など世界の大指揮者をはじめ錚々たる超一流の顔ぶれであった。四ツ橋筋を挟んで左手に見えるのが朝日新聞本社の増築部分で、ガラス張りの塔がある部分は戦前の本館である。こちらもモダニズム20選入りしている。
そもそも、朝日新聞社の登記簿上の本社はここである。東京・築地の「東京本社」は法的にはただの一支店に過ぎないのだ。発祥の地をないがしろにする企業になど、何の未来があろうか。



 

左・右:錦橋からフェスティバルホールを臨む。



 

左:肥後橋から見た、新朝日ビル正面ファサード。
右:同じく肥後橋の橋上から見た朝日新聞大阪本社の戦後増築部分(増築部分を「朝日新聞ビル」と称する)。



 

左:土佐堀川に面した朝日新聞ビル南側ファサード。
右:左の高層部分が朝日新聞ビル、右側が戦前モダニズムの傑作、大阪朝日ビルである。1931(昭和6)年に竹中工務店の俊英、石川純一郎の設計で建てられた傑作だが、邪悪な朝日新聞社はこれをもあっさりと破壊するといっている。「歴史に学ばない」のは右翼の特質かと思っていたが、さにあらずということか(ーー;)。何がクオリティペーパーか。呆れ果てる。



 

左:朝日新聞ビルと大阪朝日ビルの継ぎ目部分。ガラス張りの階段室がモダニズム創成期の息吹を今に伝える。
右:装飾に覆われたビルヂングが当り前だった昭和初期、この銀色に輝くアルミやステンレスのパネルに覆われた外観は、非常に斬新で未来的に感じられたことだろう。こちらはまだ破壊されていない。朝日新聞社が企業責任に目覚めることを望む。



 

左:永遠に失われてしまった、フェスティバルホール正面入口。扉の取っ手はなんと大理石製であった。
右:大阪朝日ビル四ツ橋筋側ファサード。この時期のモダニズム建築の特徴である、ガラス張りの塔が見えている。



 

左:塔を見上げる。豪華客船全盛期なので、船を意識したデザインである。
右:四ツ橋筋東側から見た、アールの美しい大阪朝日ビル北東角。



 

左:渡邊橋から見た正面ファサード。実に美しい。十階建ては戦前としては最高層である。十階、全面ガラス張りの部分に日本を代表する超一流レストラン「アラスカ」が入っていた(現在は朝日新聞ビル内に移転)。
右:旧アラスカ部分と硝子の塔。



 

左:西側の増築部分は朝日ビルと称する。
右:渡邊橋から見た大阪朝日ビル。



 

左・右:大阪朝日ビルファサード詳細。



 

左・右:このメタリックな外壁は、とても戦前のたてものとは思えないモダンさである。曲面硝子も斬新。



 

左・右:これを壊そうという人間の美的感覚は、便所蟲以下といわれても致し方あるまい。写り込んでいるのはアクア堂島ビル。



 

左:四ツ橋筋側の増築部分との継ぎ目。内部は一体化している。
右:こちらは土佐堀通り側の継ぎ目。



 

左:同上。塔が見えている。
右:放射能汚染で人類滅亡を目論むガミラスのごとき悪の秘密結社関西電力の旧アジト破壊現場(2009年現在、ここには中之島ダイビルというラブホテル顔負けの下品で悪趣味な超高層ビルとなっている)から、村野藤吾の傑作の一つ、ダイビル新館(大阪ビルヂング新館)が見える。1937年、これも戦前とは思えない水準のモダニズム建築である。背後の醜悪なうんこ色のビルは関電の現本拠アジト。



 

左:ちょうど京阪中之島線建設工事が行われていた。
右:この塔の軽やかな威厳、現代建築ではまず出せないだろう。



 

左・右:渡邊橋南詰交叉点より。大同生命館がチラッと見えている。朝日新聞が発表している超高層化計画は、大同生命のような美しいものではない。



 

左・右:渡邊橋を北に渡ると、堂島ホテルがある。近年(バブル期)の『贋レトロ』の中では、比較的よく出来た建築である。



 

左:堂島ホテル正面玄関。ドーリア式のオーダーだが、ちゃんとエンタシスしている。
右:同じフォルダに入っていた、5月17日撮影の写真。船場心斎橋のヤマダ靴店である。



 

左・右:全面黒タイル張りのヤマダ靴店。



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